第3話

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「とある人物を頭の中から消してほしいと依頼された。誰を消したかは流石に言えんがな」 「そうですか……」 僕には驚きだ。 天真爛漫なエリカが心に重大な何かを抱えていたということを。 今はその何かがないからあそこまで明るく振舞えるのであって、かつては月のない夜のように暗かったのかもしれない。 でも暗いエリカなんて想像できない。 僕にとってエリカとはいつでもどこでも明るく愛らしい女の子だ。 亡き妹がそうであったように。 「ごちそうさま。釣りはいらねえ」 お代をカウンターに置いて店を出た。 カウンターにはカフェラテとトマトレタスサンドの合計料金が置かれている。 「なんだ、ちょうどじゃないか」 お代をレジに納めておいた。 さすがにエリカを起こさないといけない。 店の奥の居住エリアにあるエリカの部屋の前に行った。 「エリカ、起きてる?」 僕は扉をノックした。 応答なし。 部屋は沈黙を守っている。 「入るよ」 恐る恐る扉を開けた。 部屋は意外なほどに簡素だ。 ふかふかのカーペット、真新しいカーテンとレース、机、椅子、ベッド。 この部屋にある小物以外のものはこれだけだ。 質素な部屋に足を踏み入れた。 「エリカ、起きて」
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