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「とある人物を頭の中から消してほしいと依頼された。誰を消したかは流石に言えんがな」
「そうですか……」
僕には驚きだ。
天真爛漫なエリカが心に重大な何かを抱えていたということを。
今はその何かがないからあそこまで明るく振舞えるのであって、かつては月のない夜のように暗かったのかもしれない。
でも暗いエリカなんて想像できない。
僕にとってエリカとはいつでもどこでも明るく愛らしい女の子だ。
亡き妹がそうであったように。
「ごちそうさま。釣りはいらねえ」
お代をカウンターに置いて店を出た。
カウンターにはカフェラテとトマトレタスサンドの合計料金が置かれている。
「なんだ、ちょうどじゃないか」
お代をレジに納めておいた。
さすがにエリカを起こさないといけない。
店の奥の居住エリアにあるエリカの部屋の前に行った。
「エリカ、起きてる?」
僕は扉をノックした。
応答なし。
部屋は沈黙を守っている。
「入るよ」
恐る恐る扉を開けた。
部屋は意外なほどに簡素だ。
ふかふかのカーペット、真新しいカーテンとレース、机、椅子、ベッド。
この部屋にある小物以外のものはこれだけだ。
質素な部屋に足を踏み入れた。
「エリカ、起きて」
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