第3話

11/11
前へ
/39ページ
次へ
そのとき僕の心臓が一瞬動きを止めたかと思えた。 まるで心臓があっという間に氷結したかのような心地がした。 「ずっと抱きしめていたいと思えた。だって私の好きなにおいがするんだもの」 不愉快だ。 なんとなく胸のあたりがむかむかする。 原因はわかっている。 でもそれを理解したくない。 とても辛いことだから。 空白が嘲笑っている。 それでも僕は受け入れられない。 その代替行為としてエリカを受け入れた。 僕はエリカをそっと抱きしめた。 妹にできなかったことをエリカにしている。 いや、目の前にいるのはエリカではない、妹だ。 エリカの瞳に映るのも僕ではなく兄だ。 そして僕らはかつて踏み越えられなかった線を突破するのだ。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加