第4話

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それならばと思ってしまう自分を強く恐れた。 「いつまでエリカ<代替品>で我慢するつもりなの?」 本物はすぐそこにある。 手を伸ばせば届く場所にいる。 両手が自然と彼女へと伸びる。 彼女の柔らかそうな頬を触ろうとする。 弾力あるそれに触れた。 はずだった。 手は頬に触れることなく通り抜けてしまった。 理解した。 せざるをえなかった。 「僕の妹は既に死んでいる」 「違うわ。ここでは私たちが常識なの。お兄ちゃんが望めばわたしは生を得ることができるの」 「僕はそんなこと望まない。死者は現を闊歩してはいけないんだ」 彼女は柳のように俯いた。 「それが望みだと言うのなら、わたしからは何も言わない。でも忘れないで。わ たしはお兄ちゃんの思い出の中では生きていたい」 「わかってる。僕はもう振り返らないだけ。それは過去を忘れ去ることじゃな い」 僕は座席から立ち上がり、店外へ出る扉のドアノブに手をかけた。 空白が僕をどこからか注視している。 空白に嘲笑われる前に扉を開けた。 光に溢れたバラが咲き乱れていた。
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