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どうして……こうなるんだよ……
ようやく着いた頃にはナースさんたちがごった返していた。
原因が何かなのかは聞くまでもない。
彼女は肩で息をしながらも、彼女の目は一点を見つめ続ける。
その先には俺の腐れ縁だった奴がいた。
「京太……」
俺以外にも、ナースが必死に名前を呼び掛けて意識の確認をしている。
だが、目を閉じたその顔は微動しない。
顔は白くて、まるで死んでいる人みたいだった。
「京太!」
香奈が叫んだ。隣に膝立ちの形で立つと、京太の左手を両手で握る。
「京太、京太、京太ぁ!」
今日だけで京太の名前を何回聞いただろうか。
彼女は動くことのない彼を何度も何度も呼びかけていた。
「容態は!?」
今まで不勤務だったから、寝ていたのかもしれない。少し寝癖を残しながら、白衣を着た男性がこの部屋に入ってきた。
ナースとの早口でのやり取りをしながら、医師は香奈の姿に気がついたようだった。
「君、悪いけど退いてくれないか!?」
そう忠告をされているのにも関わらず、香奈はその場から動こうとしない。
俺が急いで彼女の腕を掴んで引き離していると、医師は「ありがとう」と一声かけて、
京太の心音を確かめていた。
「まずい……!」
苦い顔を更に歪めると、先生は心臓マッサージの体制に入る。
一回、二回、三回……。
何度も行って、蘇生を試みている。
しかし反応は胸を押された反動だけで、京太の息は吹き返すことは無い。
「そんな…………何で……?」
弱々しい声は震えていた。
俺は何も言わずに、香奈の肩にそっと手を添えるしか出来ない。
「…………先生」
ベッドの横にいたナースさんが俺たちの様子をチラチラと目配りした。
医師に何かを伝えようとしたのは明白だった。
やがて、医師はマッサージをやめた。
黙ったまま首を横に振る。
それが、全てを悟っていた。
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