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「分からない。医者がいうにはもう少し入院させる必要があるんだって」
香奈は花をギュッと抱きしめていた。
もう少し……か。前もそんなこと聞いたような気がする。
俺は香奈の様子を見ながらそう思っていた。
「京太の病気って確か、ストレスによるものだったよな?」
「うん……。何かダルさとか最初は訴えていただけで。でも、急に病院行きになったから、私もびっくりしてさ……」
語尾が段々弱くなっていくのが耳で分かり、そして落ち込んで行く様子が目に見えて分かった。
やはり彼女も京太のことが心配になっているのだろう。
それはそうだ。……香奈は京太のことが大好きなのだから。
感情は違うけど、心配する気持ちは痛いほど分かった。俺だってあいつとは中学、そして高校を経ての親友だ。
本当なら俺だって毎日顔を出してやりたい。元気づけてやりたかった。
でも……俺にはもう必要ない。居場所は――――もうないのだ。
俺は目の前にいる香奈を見つめた。
『ねぇ、雅人! 京太って人に会わせてもらえるようにお願いできないかな……』
あまり俺を頼ることの無かった香奈が、珍しく俺に懇願したあの日。
俺はあの日から、理解してしまったのかもしれない。そして、後悔しているのかも知れない。俺は自分を偽り続けていた。香奈が嬉しそうに京太の話をしてきたら乗ったし、京太が彼女のことで悩ませていたら一緒に考えてやった。
でも…………側にいるはずなのに、俺は距離をおこうとしていた。そして……二人ともそのことには気付いていない。
だから余計に辛かった。
苦しんでいた。
見舞いに行かなかったのもそれが理由だ。
こんな気持ちで親友に会いたくない。いや、会う資格が無い。
そう……思っている。
「ようやく来てくれた。ずっと私だけだったから不安でさ……」
「いきなり泣かれたからな、そりゃあ行くしか無いだろ」
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