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相変わらずデカイ病院……
首筋に感じる汗をポケットに突っ込んでいたくしゃくしゃハンカチを使いながら、俺は
心の中で感嘆としていた。
病院は七階、八階まで存在しており、横幅なんて、東京タワーを横にした長さがある。
途方もなく大きい病院に俺は沈黙するしかなかった。
「何か、辿りついたのにあまり喜んでいないね」
感情が俺の顔に出てしまっていたのだろう。それとも辿り着いたのに、表情を変えなかったのか。
とりあえずそんな気持ちを察した香奈が、横から覗く形でこちらを見てた。
「まぁ…………こういうところは正直苦手なんだ。人多いし、迷いそうでさ」
「珍しいね。そんな弱音言うなんて」
「弱音というか、その……」
愚痴って言ったほうが正しいんだが……
そう思っていても、俺は口に出すことは拒んだ。
理由は簡単。こんな話長引かせたくないからである。
人に弱みを握られるのは良い気がしない。相手が気にしなくても、だ。
「でも大丈夫だよ! ここ、広いわりに人少ないし、雅人の言うような環境ではないと思うよ!」
予想通り、彼女がこの話を終わらせてくれた。俺も用意していた言葉で言わせてもらう。
「そうか、なら中に入って確認しようぜ」
中に入ると今までの暑さが嘘のように感じる。それと共に、鼻からは病院特有の薬品の匂いも感じた。
クーラーの完備された病院内。清潔感を出すために配色された白色を基盤としていて、アクセント程度に植木がある。
フロアの真ん中には、待機用のベンチが完備されていた。
香奈は気にすることなく、『受付』と書かれた窓口に呼びかけていた。
「こんにちは」
「あら、羽山さん。今日も来たの?」
出てきたのは母親と同じくらいの四十代だろうか。少しシワの見える顔だが、まだまだ現役でいけそうな活力が見える人だった。
羽山と呼ばれた香奈は友達と話すときに見せる笑顔で対応していた。
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