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話は弾んですっかり夜も更けてきた。
「すまないな、結局夕飯まで」
「いいんですよ。普段できないことをしてくれましたし」
夕飯も御馳走してくれるとなった俺は何もしないのも悪いと思い、薪割りやら家のちょっとした修繕やらをした。
このとき彼女が創った石を使わせてもらったのだが、かなり良かった。
彼女がメイカーとして優秀なのか、それとも俺の魔法と彼女の石の相性がいいのかはわからないが。
「旅人さーん。できましたよー。降りてきてくださーい」
「ああ! ……いや、ちょっといいか?」
「はい?」
俺は屋根から飛び降りると彼女の腰にしっかり腕をまわして、
「えっ!? ええっ!?」
「しっかりつかまっててくれ!」
「え? 何が……ひゃっ!」
もう一度屋根に飛び上がった。
「旅人さん? どうしたん……」
彼女は何か聞こうとしたみたいだが、それは目の前の景色に目を奪われ、中途半端になった。
「俺もそれなりに旅をしてるけど、こんなにきれいな夕方は初めてだ」
「こんなにきれいだったんだ」
木々の間から見える山に沈む夕日。
山に反射した光がキラキラに輝いている。
空は赤く、夕闇とのコントラストがそれを際立たせている。
「……旅人さん」
「……なんだい?」
「旅をしてるとこんなにきれいな景色をいろいろ見れますか?」
「ああ……だけど」
この屋根から見える景色は……
「この夕景色は俺が見てきた中で一番の夕景色だ」
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