森のメイカー

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「あの、旅人さんは旅をして長いんですか?」 「ん? まぁ、そうだな」 「あの……ロス・マルスというメイカーを知りませんか?」 「うーん。聞いたことがない。師匠か何か?」 「そうです……」 そう言うと首から下げていた石に触れた。 「私を育ててくれて、石を創ることを教えてくれた、大切な人なんです」 こういうことは時々ある。でもたいていは知らない人ばかりだ。 「すまないな」 「いいえ、いいんです。広い世界ですから……」 そう言うと少しうつむいた。 そう、この世界は広いし、自分達の知らないことなんてたくさんある。 不思議な世界だ。 「ほんとは探しに行きたいんです。でも私にはそんなことできなくて」 「俺みたいのに憧れるか?」 「えっと……はい」 「良いもんじゃないぞ? こんなの。それに、旅してるやつなんてほとんどは訳ありだしな」 「そうです……か」 「もう、いいぞ。ここまで来れば大丈夫だ」 「あの……!」 村の外れまで来た辺りで俺が言って歩き出そうとしたら呼び止められた。 「明日、外の世界のことお話してくれませんか?」 ああ、こういうパターンか。 「知ってみたいんです。いいですか?」 「ああ、構わないよ」 「ありがとうございますっ! それではまた明日」 そう言うと彼女は森の中に入っていった。
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