森のメイカー

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教会には村のほとんどの人々が集まっていて、たくさんの料理がふるまわれていた。 名目はもちろん俺の歓迎ということだろうが、実際はこれを良いことに普段出来ない贅沢をしているだけだろう。 「旅人さんはどこから来たんだい?」 「ウェスティアとサウスティアの間の小国の生まれです」 「というとポスティア王国かい」 「知ってましたか」 「まぁ、わたしは物知りだからね」 「まったくこのオヤジは。さすがはこの村の歩く辞書といったところだけどねぇ」 俺と話をしているのは村の入り口にいたおじさんと、お酒を樽で持ってきたおばちゃんだった。 他の人はみんなお酒を飲みながらどんちゃん騒ぎをしているだけだ。 「ここはのどかでいい村ですね」 「何もないの間違いじゃないかい?」 「いえいえ。それにあれほどのメイカーが村にいるのも珍しいです。いいメイカーはみんな都市とか町に出ますから」 「ああ、あの子はね……」 なんだ? そう言えばさっきおじさんにメイカーのこと聞いたときも……。 「あの子に何かあるのですか?」 「……あの子。ロス・メイはね」 ロス・メイ? どういうことだ? 「ほんとはこの村の子ではないんだよ。外からロス・マルスという男が連れてきた孤児なんだよ」 「その男もとある国から追放されて逃げてきたらしくてなぁ。それでの村に居ついたんだ」 こんなことを話す二人の顔は明らかによそよそしさを感じられた。 おそらくあの人やロス・マルスというメイカーははこの村からちょっとした村八分を受けていたし、いるのだろう。 だから村から外れた森の中に住んでいるんだな。 だが、不思議だ。 名字が同じだ。 もしかするとロス・メイは養子になったのかもしれない。 あるいは孤児だったがゆえに名前がなく、拾ってくれた人の名字を名乗っているという可能性もある 「あの子は普段から外の世界に興味を?」 「そうだねぇ……いろいろあったからねぇ」 「いろいろですか……」
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