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「ユーリシア!」
「大丈夫よ、少し散歩するだけ」
ユーリシアは、彼女の父親が怯えていると言った割には、とてもそうは見えなかった。
むしろ、毎日のように、何かと理由をつけては外に出たがる。
「ランディオット殺人の犯人はまだ捕まっていないんだ。
目撃者である君を狙っていたらどうする?」
「……大丈夫よ、私、何も見ていないから」
僕が呆れたように肩を竦めると、ユーリシアはいつも悪戯っぽく微笑み、こう言うのだ。
「エリオットがついてきてくれれば、安心でしょう?」
僕が、彼女の微笑みに適うわけもなく、いつだって僕は彼女のそばに居た。
「仕方ないな…けれど、最近はこの近くでも殺人があるって話だよ。
あまり大通りから離れないように」
「…大丈夫…心配、ないわ」
そう、例え殺人鬼からであろうと、僕はユーリシアを守り通してみせる。
その時の僕は、そんなことを、考えていた。
けれど、絶望は思ったより速く訪れる
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