1. 殺人鬼はその身の終わりをただ歌う

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「…ん、またか」 僕が彼女の警護役に抜擢されてからひと月余り。 ユーリシアが外出する時以外は、僕は玄関近くに用意されたの管理部屋に詰めていた。 その玄関で、たびたび不思議な現象が起きることがあった。 夜、いつの間にか、扉が少し開いているのだ。 鍵は確かに閉めた筈だから、使用人が外に出たのかもしれない。 最初はそう思っていたけれど、これが頻繁にあるのだから、何だか不気味だった。 この日も僕は鍵をかけ直そうと、扉に向かった。 「…?」 一瞬、扉の外…細道へ抜けるように、何か薄い布がひらりと視界を過ぎる。 「誰だ?」 僕は、屋敷から出て鍵を閉めると、その布が消えた路地まで忍び寄る。 返事は無かった。 けれど、今度は確かに、人の足が見えた。 腰の剣を抜き、僕はその姿を捕らえようと駆けた。 その人物は、ひらりひらりと、裏道を通り、逃げて行く。 「……っはぁ、はぁ」 僕はひたすらにその人物を追いかけた。 やがて街灯が乏しくなり、石畳が乱れる。 (そうか…この辺りは、スラム街か) この時、僕は追いかけて、良かったのか、悪かったのか。 ―それは今でも、良く解らない
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