1. 殺人鬼はその身の終わりをただ歌う

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僕が見て見ぬふりをしている間にも、事態は更に悪化していった。 スラム街近辺で、連続殺人が起きているらしい。 そんな噂はすぐ僕の耳に入り、父親は娘の警護を任せたと、僕に言う。 やるせない気持ちだけが、僕の心に蓄積する。 僕に出来ることは、何か無いのか。 そうして僕が思い立ったのは、僕の父親の所だった。 「…スラムの殺人の捜査を、やめてほしい?」 僕の言葉に父は訝しげな顔をする。 当然と言えば当然、ある日反発していた息子が、突然頭を下げてきて、更にそんなことを言い出すのだから。 「…税金を払わないスラム民がいくら死んでも、捜査をするだけ無駄でしょう」 実のところ、腐敗しきったここの警察にそれは当然で、この捜査に余り力を入れていない。 「…金なら払うよ、いくらでも」 僕は、あれだけ嫌っていた父親と同じく身を落としたのだ。 それも、結局は無為な時間稼ぎに過ぎないと、知っていながら。
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