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彼女は、ベッドの上で歌を歌っていた。
それは確か、何かの劇曲。
寂しくて、切ないメロディー。
「…これはね、一人ぼっちの吸血鬼の歌よ。
彼は、たった一人の友人をその牙で殺してしまったの。
その最期に、使われる曲」
ユーリシアは、歌い終わると静かにそう言った。
手には、詩集がある。
今の歌は、そこに書かれているものなのかもしれない。
「私、見つけたの。
あの殺人衝動を、眠らせる歌を」
「…え?」
それは、喜ぶべきこと。
しかし、彼女は悲しそうに微笑んでいる。
「それじゃあ、君はもう、普通に戻れるんだ。何でそんな悲しい顔をするんだい?」
「…あれは私に根付いた衝動。
眠らせることは出来ても、なくならない」
そう、彼女の殺人衝動は、息をするようなもの。
其れを眠らせるのは、例えば肺を取り除いて、息を止めることと同じ。
「…それじゃあ、君は」
―死ぬ、というのか
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