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それから毎日、彼女はベッドの上でその歌を歌い続けた。
彼女が言うには、其れは一種の暗示のようなものらしい。
自殺すら阻む、忌まわしい【殺人衝動】を眠らせる、唯一の手段。
もしそれが、本当にただ眠るだけなら、良かったのに。
けれど、其れを許さない程に、彼女は《殺人鬼》だった。
殺人衝動は、確かに止まった。
同時に、彼女は衰えていった。
物を食べられず、手が震え、身体はやがて動かなくなった。
それでも、彼女は、歌い続けた。
「ねぇ、エリオット。私はあの衝動に耐えられない。
いつか貴方まで殺してしまうかもしれないなんて、耐えられない」
こんな形で聞きたくはなかった。
そんな顔で、伝えて欲しくなかった。
「…エリオット、大好き。大好きよ」
想いが通じ合った、愛しいその人は。
―自らの死を、ただ、歌う
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