2. 望まれざる救世主

3/15
前へ
/89ページ
次へ
世界に生まれ落ちて、初めて聞いたのは、世界の怨嗟の声だった。 聞きたくなくても、聞こえてくる。 全ての声が、聞こえてくる。 伸ばした手で触れたモノは、須らく壊れた。 何かを願っただけで、あらゆるモノが滅んだ。 ―そして結局私は、暗い、暗い鳥籠に、閉じ込められることとなった きっと何十年もの時が過ぎた。 私は、ずっと鳥籠の中だった。 けれど、鳥籠は世界から隔絶されていて。 私は、何かを恨む声も聞かず、誰かを壊すことも無かった。 ―それだけは、幸せだと、感じていた 何重にも巻かれた冷たい鎖。 私はこの中で、朽ちることも出来ず、生きている。 「望まれて、生まれ落ちた、筈だったのに」
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加