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其処は、国境、辺境の森の中だった。
二つの国は未だ争い続けていて、今日も、多くの血が流れている。
一人の青年が、その森を歩いていた。
黒髪に、金色の瞳の、狼のようなその青年は、雨に濡れながら、たった一人で、歩いていた。
救世主、と呼ばれるには、誰かを守ることのできない、その力。
けれど、誰にも傷つけられることの無い、その身体。
―いつも、いつも、何も出来ずに、生き残るだけ
手にした剣から、滴り落ちる赤い血が、水溜りを赤く染めた。
そもそも青年は、争い自体、嫌いだった。
けれどそのように生まれた所為で、争い以外の場所を与えられなかった。
雨に濡らされた青年には、泣くことさえ、許されなかった。
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