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それから、どれだけの時間が過ぎたのか、僕にはよく解らなかった。
ぼんやりと空を見上げて過ごして居ると、芝居が終わったのか、劇場から次々と人々が出できている。
(…彼女だ)
僕はその中から、一際美しい少女の姿を見つける。
彼女は、人混みに揉まれ、今にも転んでしまいそうだった。
「…あ!」
姉とはぐれてしまったのか、彼女は人混みを誰か探しているようで、足元の階段を踏み外してしまう。
ぐらりと、ユーリシアの身体が揺らいだ。
「おっと、大丈夫ですか、お嬢さん」
「えぇ…あら、貴方はさっきの…?」
揺らぐ彼女の身体を抱き留めた僕を、彼女は驚いたような瞳で見つめていた。
「貴女は、また、と仰ったでしょう?
ですから僕は、貴女が帰りにまた転ばないように手を差し伸べようと思って」
僕の言葉に、彼女は暫く茫然として、そして一際美しい笑みを浮かべた。
「まぁ、ありがとう、お巡りさん」
そう、僕は、こんな歯の浮くような台詞が出るほど
一目で、彼女に恋をしたんだ
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