1. 殺人鬼はその身の終わりをただ歌う

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「…お巡りさん!」 ユーリシアと出会ってから、ひと月余りが過ぎた。 彼女は頻繁に劇場に通い、僕はこれ幸いと、仕事を理由に彼女に会うことが出来た。 (まったく、職務怠慢も良いところだ…) そうは思っても、彼女と出会うひとときは、僕にとってかけがえのない時間なのだから、仕方ない。 「あれ、お嬢さん。今日は花束なんか持ってどうしたんだい?」 「知らないの?今日は最終日なの、だから、ランディオット様に」 ユーリシアはそう言ってにこやかに笑う。 その手の中の、花束にも負けない笑顔だ。 「…そうか、最終日」 それと同時に、僕は落胆していた。 芝居が終わると言う事は、彼女はもう劇場に通わなくなってしまうのだろうか。 ―いっそこの想いを伝えてしまいたい しかし、拒絶されたらそれこそ彼女は僕を避けて劇場へ来なくなるかもしれない。 そんなことを、僕が逡巡していたときだった。 ユーリシアが、僕の手のひらに、そっと何かを乗せたのだ。 「…これはお巡りさんに、エスコートのお礼よ」
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