1. 殺人鬼はその身の終わりをただ歌う

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「…懐中時計?」 小さな花の装飾のされた懐中時計が、僕の手のひらに乗っていた。 「ええ、お仕事に使えるかしら? 高いものではないから、貰って」 「…ありがとう」 「じゃあ、お巡りさん。 また会えれば良いわね」 ユーリシアはそう言って、劇場へと駆け出した。 僕は、ぎゅっと懐中時計を握り締め、覚悟を決めて口を開いた。 「エリオット」 彼女は僕の言葉に、足を止めて振り向く。 「僕の名前だよ。 エリオット=クロードというんだ」 辛うじて出た言葉はそれだけで。 それでも、彼女は笑顔を見せてくれた。 「エリオット、またね!」 彼女が去って、僕は手の中の懐中時計を見る。 ―優しいお巡りさんへ 《ユーリシア=L・フロレンス》 この時僕は、まだ知らなかった。 ―この時計に刻まれたのが、殺人鬼の名だと言うことを そしてその日の夜、俳優ランディオットが、殺された。
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