1. 殺人鬼はその身の終わりをただ歌う

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僕の父は、現役の警視だ。 といっても、この街の警察は賄賂や汚職にまみれている。 もともと、そんな父親に反発して僕は自治警察に志願したのだ。 けれど、そんな小さなプライドも捨て、僕は父親の息子という立場を利用した。 「お嬢様は、僕にお任せ下さい」 プライドを捨てるだけで、彼女を守れるならばいくらでも捨てよう。 僕にとって、ユーリシアを守れること程、名誉なことはないのだから。 「ユーリシア、警護役の方が来たぞ」 僕は父親に連れられ、彼女の部屋へとやって来た。 「…お父様、私は警護なんて…」 「やあ、お嬢さん」 「…お巡りさん、どうして?」 目を丸くして僕を見るユーリシアに、僕は微笑む。 「また、と仰ったではないですか。 だから僕は、貴女に会いに」 ―こうして僕は、彼女の警護役に就いたのだった
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