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『ごめんね。好きな人が出来たから別れて欲しいの』
『‥‥なん、だと?』
ーーー
ーー
ー
「イケメンなんて死ねばいい」
世界が真っ白に彩られていた。なのに俺のお先は真っ暗とはこれいかに。寒いから嫌いだったが、新しく嫌いな要素が追加される記念すべき12月23日
今なら俺も服を真っ赤に染められそうだよ。イケメン共の血によってな
サンタ?誰その髭なめてんの?サタンの間違いだから
メリー苦しみます!!!
「ハァー‥‥ハァー‥‥」
冷え込んでいるせいか、自然と自分の吐息を両手に吹きかけながら歩んでしまう。断じて泣きじゃくって今ようやく動悸が収まりかけてるとかそんなわけじゃないから
雪に足を取られながらのせいなのか、いつも通りの道なのにやけに時間がかかってしまった。まあ足取りが重いし気も重い。オトコの子の日だろうか、今日は
信号で足を止める。ついでに俺の人生の歩みも止めて欲しい。目の前の信号の色は赤から青へと直ぐに変わった。それと同時に無機質な音が流れる
「寒いなぁ‥‥ホントもう」
「はぁー心が」
俺の心は寒冷期を通り越して、生き物が死に絶える氷河期に突入だよ
音が耳に入るに伴い、俺は殆ど反射的に足を進める。左右確認しないと危ないだって?馬鹿だなぁ、車が来たら音で分かるだろ
それに今の俺の歩みは何人足りとも止める事は出来ん。歩行者こそが強者なのだ。人身事故舐めんなよ、おら!人生クラッシャー第一人者だぞ!
‥‥‥まあ俺の心は既にクラッシュしてるけどね
と、言ってる側から白いトラックが荒ぶる音と共に横路地から颯爽と現れる。例えるなら走り狂う牛みたいにそいつは全く止まる様子がない
(おぅ危ないなぁ。こういう人がいるから、交通事故が無くならないんじゃなかろうか)
身の危険をぼんやりと感じ取りながら、先ほどまでいた信号手前まで下がりトラックが過ぎるのを待つ
「え?」
一ートンッ!
何かが、否。誰かが俺の背を軽く押した
瞬間、耳を劈く音が響き渡る。これは多分ブレーキをかけたトラックのタイヤがアスファルトを擦っている音だろう
「あー。俺ってばほんと不幸」
誰が押したのだろうか。いや、誰でも良い事だ。俺は此処で死ぬ。無惨に凄惨に、一片の可能性もなく死に絶える
視界はトラックのライトによって何も見えず白んでいる。物凄い衝撃が俺の体を駆け巡ったのはそれから一秒後の事だった
「ひ、で‥‥‥ぶ」
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