prologue

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 私がまだ幼かった頃、母さんに尋ねたことがあった。 「どうして沙夜はこんな風になっちゃうの?」  私は、満月になると姿が変わってしまう。  混じりけのない銀色の髪、血のように真っ赤な真紅の瞳。  私が村に居た頃、よくこれで苛められていた。それも、過去のことだけれど。  そんな私の質問に、母さんは柔らかく微笑んで答えてくれた。 「沙夜、それは、沙夜が私たちの先祖の血を引いているからなんだよ」  母さんからその返答を聞いた私は、幼いながらも妙に納得している自分がいるのに気付いた。  それと同時に、自分がやはり人間でない現実を突き付けられた気がして、悲しくなった。  ―――化け物の自分は、捨てられて当たり前なのだと  そんな風に自虐的な呟きを、母さんは叱った。  叱った母さんの顔は、どことなく、寂しそうだった。  母さんたちが寝静まって、一人で外に出る。  近くの湖まで来ると、草むらに座り、近くの石を手に取り、投げ入れた。  湖に移っていた月の影が石を投げいれた衝撃でゆらゆら揺らめく。  私は、寝そべって寝るわけでもなく考えていた。  私を捨てた、本当の母親のことを………
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