0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇママ、どこに行くの?」
まだ幼かった私の問いかけに、母は答えてはくれなかった。
母に腕を引かれ、連れてこられたのは、村の外れにある森の入り口だった。
その森は、獣にあふれているから、近づくと食べられてしまうと母から言われていた。
「ママ、帰ろうよ。危ないよ。食べられちゃうよ」
当時はまだ森が恐ろしかったから、とても怖かった。
私は、帰ろうと必死になって母の手を引っ張るが、幼い子供にそんなことが出来るはずもなく。
10分ほどたったところで、母は私と目線を合わせて、とても悲しそうに言った。
「ごめんね、××。私はもう、あなたを育てることが出来ないの」
当時の私は、それがどういう意味か全く分からなかった。
私の所為で、母が村の人たちに嫌がらせを受けているなんてことも、全然知らなかった。
幼いながらに、母がどこかに離れて行ってしまう気がして、私は泣いてしまった。
それを見て、とても悲しそうに、母も泣いた。
最初のコメントを投稿しよう!