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此処には壁がない。
温もりが欲しい。
何かに触れる事を期待して、毎日前へ前へと歩き続ける。
そしてやっと何かに触れられた。【冷たくない】何かに…。
でも液体は鉄の匂いがするだけ。暗闇じゃ何も見えやしない。
手で…鼻で感じるだけ…
それでも【無】よりは良かった。俺は嬉しかったのだ。
やがて【冷たくない】何かが流れている源の辺りから、光が漏れだしてきた。
見える…。
見えるよ…。
あれ…太陽ってこんなに明るかったっけ?
あれ…壁ってこんなに赤かったっけ?
あれ…人間ってこんなに赤かったっけ?
あれ…手ってこんなに赤かったっけ?
『将軍長、こっちの死人も生き返えりましたぜ‼』
若そうな男が覗き込む。
『まだ新しいから、コイツはそれほど見た目グロくねーな』
『死人?』
『うぉ⁉喋った❗キモっ‼』
『何の話だ…』
『ふむ。眠っていた所済まない。名前は…』
さっきの男より頭の良さそうな男が颯爽と現れる。
『レリエムか。なかなか変わった名前だな。何処かの末裔か?』
『答えるべき…か?』
『嫌なら答えなくても構わん』
長い青髪が風になびき、鎧と腰の長剣が鈍く光る。
『突然で済まぬが、我が軍に入隊してくれまいか?』
『軍?』
『そうだよ。この百年戦争のエルダリアン将軍長率いる非民主派独裁推進軍の勧誘さ』
『何の話だ⁉』
『分からん奴だなァ〰』
『少し黙っていろゲーラ』
『あ、はい…すいません…』
ゲーラ、彼にプライドは無いのだろうか。
『ギャッハァァァァァァァァ将軍長ォォォォ⁉』
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