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―あれは3ヶ月前―
僕は久々に城下に出かけていた。その時、見覚えのある顔が前方からやって来た。それは僕を抱いていた僧の1人だった。
僕は幼い頃の記憶が蘇り体が動かなくなった。
僧は僕に気づいたらしくニヤニヤしながら近づいてきた。
「久々だな。元気にしていたか?」
下心丸見えの言葉に僕は悪寒がした。少しの会話の後僧が唐突に
「お前が居なくなって寂しかったんだ。久々にどうだ?」
と僕の尻を撫でながら言った。そこは薄暗く人通りが少ない道だ。僕は何も出来ず黙って俯いていた。僧の手が僕の自身に触れそうになった時…
「こんな所で何をやっている!!」
聞き覚えのある凛と澄んだ声が響いた。この声の主は知っている。
「僧が白昼堂々こんな道端で何をしている!!恥をしれ」
そう言った息次の存在感が凄かったせいか、僧は急いでこの場から立ち去った。
「大丈夫か?」
震える僕に息次は声をかけてくれた。
「あの…助けていただきありがとうございます」
僕は息次に頭を下げた。
「全く今時の僧は煩悩の塊だな」
苦笑しながらそう言った息次に僕は少し見とれてしまった。男の僕から見ても息次はやっぱり格好イイ。そんな僕に気づいた息次は微笑みながら言った。
「君は…吉比良と言ったな。吉比良綺麗な顔をしているから、気を付けた方が良い。今日は俺がいたから良かったものの…」
僕はとても驚いた。名前を覚えられていた事もだけど、僕が綺麗だなんて!!確かに女顔と良く言われるが、そんな事は今まで言われた事がない。顔がとても熱くなった僕に息次は吐息を吐き出すような小さな声で何かを言った。聞き取れなかったけど、とても真剣な顔をしていた。
僕は「また襲われてはたまらないだろ」と言った息次と共に帰路についた。
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