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朝食を済ませたところで、皿を丁寧に洗う。
水道は使えるのだが、たまに蛇口をひねっても水が流れてこないことがあるのが難点だ。
だからといって贅沢は言ってられない。
これも人間らしい生活のためだ・・・そう、あんな《化け物》のような、醜く、卑しい「食事」とは自分は違うのだ。
いや、あんな行為は最早食事などではなく、人間が人間を《捕食》しているに過ぎない。
洗った皿を流しの横の食器乾燥機に立てる。
なんだかトウモロコシが胃から戻ってきそうだった。
食事のあと、寝室に戻り、閉めたままだったカーテンを開ける。
眩しい朝の日差しに目を細めながら、町を見下ろす。
ここは8階だ。
この部屋から見える風景は、向かいのビル。
それと、こちらのビルの間を走る道路だけだ。
勿論、人がいるはずもなく、動くものといえば、風になびく街路樹くらいなものだった。
あの《化け物》を除いては。
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