波乱は呼び込まれるもの

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「ヤバい……本当にやらかしちまった」 携帯片手に光太郎はドーム内を歩き回っていた。 電話をしようとした相手は沙姫だ。しかしながら向こうは先程から出ないので携帯としての役割を果たしてくれていない。 一応はアリアや円香にもコールしているが無反応ときたものだ。 何度もトライを繰り返すが、そろそろ限界かもしれない。 「参ったな」 何度目になるか分からない呟き。 ただ闇雲に歩くだけ。 「つか、何でスエーとすら会えないんだよ」 さっき浦河と歩いている時は遭遇したというのに会いたい時に会えないとはこれ如何に。 最悪受付まで戻りたいと考えたが、神様というのは残酷で許してはくれないらしい。 「どうすっかな」 「何が?」 光太郎の呟きに答える声があった。 ーーー今の声って…… 今の声に聞き覚えがあった。 “原作に出てくるキャラクターの声を間違えるだなんて真似はしない。” 声がしたのは真後ろ。 光太郎が振り返ると(現在の姿の)彼よりも歳が1つ2つかは上の少女。 腰まで伸ばされた黒い長髪、瞳は空のように澄み切った青色。肌は雪と見間違うかのように白い。 服装は白のリボンが胸に着いている赤を基調とした長袖のセーター。下は黒のミニスカート。 「こんなところで何をしてるの?」 凛とした声音が響く。 相変わらずだと光太郎は苦笑していた。 キャラクターの性格がブレていない事に嬉しさを覚えている。
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