秋月夜

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1. とーん、とん ととーん、とん、とん 兎が飛び跳ねれば心地よい足音がします でも森の住人は 『ひねくれうさぎが来たぞ、大事なものを隠せ』と大騒ぎ 春になれば 幼子の桜を散らし 夏になれば 憩いの水場で跳ね回り 秋になれば 丹精込めた吊るし柿落とし 冬になれば 眠りの大熊揺り起こす 兎が跳ねれば小さないさかい巻き起こる 謝らない兎と友達になる子はいません 兎だってそんなものはいらないと口元への字 ある夏の日 澄み川辺の河童に夏だけの友達がいると知ります からかい半分で木陰から覗いてみると お腹の中が温かくなるような話し声 一緒に笑いたくなるような笑顔が溢れていました チクリと針で刺されたような痛みが面白くありません とん、ととん! 自慢の足で二人の間を駆け抜けます 二人が積み上げていた石に『偶然』当たって崩れても知らんぷり 『ひねくれ兎!悪いことばっかりしてると天罰下るぞ!』 『兎の行く先にいた河童が悪いんだもの!』 胸の痛みも消えて兎は上機嫌で森の奥へ消えました
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