秋月夜

3/10

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
2. 森の社でうたたねしていた兎が目を覚ますと 月に照らされた社の奥で何かが光ります 小首をかしげた兎が見たのは 大切に祀られた丸くて綺麗な鏡でした 手に取り覗き込むとそこには兎の顔 右見て 左見て 笑って 怒って 兎そっくりに鏡は 写し出します まるで中の良い双子のようです ひとしきり中の友達とあそんだ後 冷たい鏡面に触れてつぶやきました 『…あなたみたいなお友達ならいいのにな』 ととん、とーん、とん 足音に振り返ると そこには鏡の中のそっくりな友達がいました 兎が手をさしのばすと友達はにこりと笑って手を取ります ひねくれ兎は、初めて友達を得たのでした
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加