秋月夜

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3. 友達は月の輝く夜の社にしかいないこと どれだけお願いしてもお話をしてくれないこと 不思議ばかりでしたが一緒にいるうちに気にならなくなりました 兎にとって毎夜がとても楽して仕方なかったのです 手を重ねて野を走り秘密の場所を案内したり 野花で花輪を作り合いっこしたり ひとしきり駆けて寝転んだ視界にまん丸お月様 『見て?お月様には仲良し兎が二匹いるの まるで私たちみたいね』 繋いだ手と笑う友達が嬉しくてほんの少し 泣いてしまいました 帰り道 森の樹に穴が空いているのに気付きます 兎はいつもの悪戯をしようと思いつきました 小さな穴ぐらには眠る小鳥 兎が樹を揺らすと驚いた小鳥が一斉にとびだします 中には幼く飛ぶ事がおぼつかないものもいました 何本もの樹に繰り返すと昼の森のように騒がしくなりました 腹を抱えて笑う兎はふと気付きます 以前、同じ事をして大鳥主に怒られた事を 友達も叱るのかな?と恐る恐る振り返ると 友達も同じように大笑いしていました 怒らない! 兎は嬉しくなって 今までの悪戯をいくつも友達に披露しました 小豆とぎのたらいを隠して 大百足のワラジの左右をちぐはぐに! 二人はたくさん悪戯をして たくさん笑いました 社でさよならをした時 兎は気付いていませんでした 友達の爪が黒く伸び歯がほんの少し尖っていたことに
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