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4.
風が冷たくなって月が白く冴える頃
夜更けに響く足音は森に住む者たちの恐れの対象となっていました
今日も今日とて悪戯を繰り返した兎達
社の前まできた時
兎は一歩遅れて背後にいる友達の異変に気づきました
繋いだ手が堅くごわついていたのです
兎が振り返ると
そこに見慣れた友達はいませんでした
黒いもやのようなものがいたる所から漏れて流れ
真っ黒な姿に空いたぽっかり穴に目が二つ
薄く嗤う口元には尖った鋸歯が覗いています
好きな笑顔も今は恐ろしいばかり
兎は手を振り払ってそこから逃げ出しました
次の日も
そのまた次の日も夜の社に行きませんでした
でもあれは見間違いだったのかもしれない
そう思った兎はそっと夜の木立から覗いてみました
あれ、はそこにいました
真っ黒な影は月を眺めては時折下をじっと見つめます
それを延々繰り返すのです
兎は気付きます
月の話と いつも自分が訪れていた小道だった事に
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