ビンテージ

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「青臭くてえぐいのも大好きなくせに。」 勇人は1人の女で満足しているような男じゃないのは嫌というほど知っている。 美しい妻も香織という積年の恋人もありながら、今なお咲きかけの蕾のような若い女も手に入れないと気が済まない。 女たらし。 「ヌーボーの味見もしたいじゃない?でもやっぱり行きつくところはお前なんだよ。」 そう言いながら勇人は香織の腰を抱いて自分に引き寄せた。 「極上のビンテージはいつだって期待を裏切らないしいくら味わっても飽きないんだよ。」 勇人は言い終わるか香織の唇を味わった。香織も久しぶりの勇人の味を確かめる。 「やっぱりやみつきよ…勇人の味…」 つくづくズルい男だと香織は思った。 勇人と初めてキスをしたのは20年以上も前だった。それから何度キスを重ねたことだろう。 そのたびに切羽詰まったように喉がカラカラになり胸がかき乱される。 歓喜で満たされる時も、苦しくて絶望した時も。
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