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夜中に、翼の泣き声が聞こえる度に、訳も分からずに怒りが込み上げてくる。
最初はそれほど気にならなかった恵のあやし声さえも、妙に気になってしまい、夜も眠れない状態になっていた。
「茂ちゃん、翼はまだ赤ちゃんなのよ。泣く事でしか、自分の気持ちを伝えられないのよ。だから、そんなに怒ったような顔をしないでちょうだい」
恵の言葉に対しても、何の返事も出来ない自分の不甲斐なさを実感するのだった。
「……それは分かっているんだ。でも、俺も仕事が大変な時期だからさぁ、毎晩のように泣かれると、眠れなくって」
溜め息交じりの茂の言葉は、恵の疲れた心に重くのしかかっていく。
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