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……それは、ちょっとした出来心だった。
茂の心の中にある男としての一部分が静かに目を覚まし、やがてそれは茂の中で大きくなっていった。
(恵の事が嫌いになった訳じゃあないんだよ。でも、俺も、正直言ってどうしたら良いか分かんないんだよ)
言い訳のように自分に言い聞かせながら、茂の心は恵ではない別の女に向き始めていた。
「今夜、急に飲み会が入ってしまったんだよ。ごめんな、恵」
「……そうなんだ。余り飲み過ぎないようにしてね」
優しい恵の言葉が嘘をついている茂の心に突き刺さる。
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