4人が本棚に入れています
本棚に追加
藤森が三塁ベースをまわったところで良太は藤森に声をかける。
「なんでツーストライクまで打たなかった!わざとか!わざと打たなかったのか!」
良太は我慢できずに感情があらわになる。
藤森は答えずにホームベースへと走る。
そして右足でベースを踏み、そのまま顔だけを良太に向けた。
「だってよー、俺相手に3つのストライク取るの大変だろ?だから打たなかったんだよ。ハンデだよ、ハンデ。まっ、意味なかったけどな。」
言い終えた藤森はベンチへ戻っていった。
ネクストバッターズサークルにいる4番の中田とハイタッチをして、他のナインとも先制点を喜び合っていた。
良太には返す言葉がなかった。
いや、言い返したらただの負け惜しみだと思い、何も言い返せなかった。
良太はマウンドに歩いて戻っていった。
東次郎はそんな良太の姿を見ながら藤森のセリフを思い出していた。
ハンデ?藤森にとって良太は眼中にもないくらいな敵なのか。
藤次郎もゆっくりと守備位置戻り座る。
良太に声をかけにはいかなかった。
中田が左バッターボックスで構える。
良太はさっきの言葉を引きずっていた。
その気持ちの整理がつかないまま、ボールを投じた。
真ん中高めの某球。それは、中田のバッタの真芯に当たり、綺麗な放物線を描き、ライトスタンドを超え、特大の場外ホームランとなった。
良太と東次郎はスタンドを見て、呆然と立ち尽くす。
バッターが三塁を回ったところだった。
「ターイム!!」
大きな声がセンターからした。
佐取だ。
内野、外野、そして、東次郎がマウンドへ集まる。
良太と東次郎は下を向いたままだった。
最初のコメントを投稿しよう!