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「良太、東次郎、うちのベンチを見てみろ。」
佐取はそういった。
良太と東次郎はベンチを見る。
目に入ったのは彩乃だった。
彩乃は不安そうな顔をしてマウンドを見ていた。
いつもと違う顔に2人は動揺した。
彩乃は中学時代、2人がピンチになると、ベンチからメガホンで檄を飛ばしたり、伝令としてマウンドに行き、審判に止められる程だった。
しかし、今は足が鉛のように重く、歩き出すことができなかった。
そんな彩乃を見ていた2人に佐取が続けて言った。
「あいつを安心させてやれ。マウンドに来ないってことは、相当落ち込んでるんだろう。中学の時みたいな、活気のある小田を、全国大会決勝のお前らを見せてくれ。」
この言葉を聞き、2人は思ったことがあった。
2人は全国大会の話をしていない。
そして、あの試合を見ていなければ彩乃がベンチを飛び出し、マウンドに来ることを知らない。
試合中だったが、聞かずにはいられなかった。
「なんで、全国大会に行ったことをしってるんですか?」
他の選手が″全国大会″という言葉に対して疑問を抱いている中、佐取が2人の疑問に答えた。
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