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「ナイスピー!」
「この調子で行こうぜ!」
良太へ選手達が声援を贈る。
良太はボールを受け取り、次のバッターを見る。
7番の宮田。
外角低めのストレート。
宮田が打ち、打球がショートへ転がる。
それを、長野がしっかりとさばき、ショートゴロにする。
スリーアウトチェンジになった。
守備を終えた選手達がベンチに戻ってきた。
彩乃の表情はまだ暗かった。
良太と東次郎はベンチに戻り、すぐに彩乃ところへ行く。
「わりーな。でももう心配させることはしないから。」
「…うん」
良太と東次郎は、力のない彩乃の声を聞き、早めに安心させてあげなければなと思った。
1回の裏。
星花の攻撃。
1番の佐取が左バッターボックスに入る。
ピッチャーには藤森、キャッチャーには先程特大ホームランを打った4番の眼鏡をかけた関西弁の選手、中田だった。
藤森の1球目。
外角低めのストレート。
佐取は見逃し、ストライクになった。
2球目。
内角高めのストレート。
佐取は今度も見逃した。
ツーストライクと追い込まれた。
「さっきの俺のハンデのお返しかー?やめとけって。恥かくだけだぞ。」
藤森の言葉に佐取は表情を全く変えずに3球目を待った。
その態度に藤森はイライラした。
「びびってるだけだろ。俺の球を打てるもんなら、打ってみろ!」
3球目は外角低めのストレート、いやドロップだった。
佐取は持ち味のミート力をいかしボールをバットに当て、レフト方向へ流す。
三遊間を綺麗に抜き、ヒットになった。
藤森は一塁にいる佐取を見ていた。
俺のドロップが打たれた?こんなチームの1番に打たれたのか?
「…、…ん、おい俊!」
マウンドには中田が行き、藤森に声をかけていた。
藤森は驚いたように中田を見る。
「気にするんやない。あいつは別格や。」
そう言い、藤森を落ち着かせようとしたが、藤森は怒りを中田にぶつける。
「うっせ。戻れ。俺に指図すんな。」
そう言い、手で"あっち行け"というようなしぐさをする。
それを見て、中田は守備位置に戻る。
その顔は微笑んでいた。
藤森はイライラするほど球のノビ・キレが良くなる。
それを知って中田はマウンドに行ったのだ。
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