明秀学園

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後ろには同じジャージを着た2人の生徒がいた。 良太には見覚えがあった。 それは9回の守備時、ふとスタンドを見た時に鋭いまなざしで良太を見ていた3人だった。 他の部員がバスに乗り込む中、良太と東次郎だけが引き止められた。 「うちの学校の野球部へ来なさい。もちろん推薦入学させてあげよう。」 良太、東次郎以上に驚いていたのは監督だった。 他の部員もバスの窓を開けて見ていた。 「おぉぉい、このお方はだな、あの野球の名門校の明秀学園高校野球部監督の大貫さんだぞ。お前達は○△□※・・・」 監督はろれつが回っていなかった。 明秀学園。 数年前から野球の名門校へとなり、昨年は春の甲子園でベスト4、夏の甲子園は準優勝、今年は春夏を連覇した強豪校である。 プロも視野に入れられる高校であり、推薦がくることは滅多にないことだろう。しかし、良太はこう言った。 「あー、遠慮しておきます。行こうぜ、東次郎。」 東次郎もそれにうなずき、バスへ向かっていった。 すると、後ろから大きな笑い声が聞こえた。大貫だった。 「面白いことを言うもんだね君達は。うちに入れば、甲子園フリーパスも当然で、強い敵と戦うことができる。そしてプロだって視野に入れることもできるんだよ。うちを断ってどうするというんだね。」 良太は足を止め振り返り、覇気のない声で言った。 「他の高校であんたらを倒します。だって、強い高校から甲子園行ってもつまんないし、後ろの2人と勝負できないじゃん。」 大貫はその言葉を聞いて微笑んでいた。 後ろの2人は明学の自慢の野球部員だからだ。滝洸貴。 1年生から明学のエースであり、ノーヒットノーランも数多く達成してきた本格派の左腕である。 末永拓。 1年生から1番センターでスタメン出場しており、出塁率はほぼ10割である。 この2人、すなわち明学のT.Tコンビを知らない高校球児、監督はいないだろう。
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