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「東次郎!もういいぞ。全力でいくからな!」
「オッケー!頼んだぞ。」
その声を聞き、顧問たちは身を乗り出して良太を見る。
良太は大きく振りかぶる。
東次郎の構えが一段と大きく見えた。
左足を上げ、グローブの中のボールをしっかりと握る。
左足のスパイクの金具で土を噛み、腕を力強く振り、ボールを投じた。
そのボールがうねりをあげながら東次郎をミットをめがけて走っていく。
そして、ミットが大きな音を上げた。
大会の時より速かった。
疲れは全くなかった。
良太の球を見て全員が驚いていた。
その後、顧問が投げた球を東次郎が打った時には、フェンス直撃や場外を連発した。
佐取が二人に近づいてきた。
「すごいじゃないか君達!本当にうちに入ってほしい。うちはバッテリーがいないんだ。君達がいれば明学も倒せるよ。」
この言葉を聞いて、良太と東次郎は忘れていたことを思い出した。
明学の大貫が言っていたこと、星花に名プレイヤーがいることを。
「あの、この学校に明学の推薦を蹴ってこの学校を選んだ人がいるという情報を聞いたんですが、どなたですか?」
場が凍りついたように静かになった。
良太はいけないことを言ってしまったと思ったが返答を待った。
「俺だ!」
答えたのは佐取だった。
能力的には当然だった。
「俺は明学のスカウトの大貫に誘われたんだ。しかし、俺は甲子園フリーパスの高校なんかに行きたくなかった。それに俺は偉そうな指導者は嫌いなんだ。そんで、父の親友の井之内先生の下で野球をすることにしたんだ。大貫に『絶対に明学を倒す』って言ったんだが、勝つどころか、対戦もできていないけどな。」
また、場が静かになった。
この静けさをといたのもまた佐取だった。
「頼む。俺に、いや、俺達に力を貸してくれないか。」
良太と東次郎をしっかりと見て返答を待っていた。
良太と東次郎は顔を合わせ微笑んだ。
2人は初めからこの高校に入るために練習を見に来たのだ。
答えは初めから決まっていた。
「いいですよ。俺らも明学のスカウトを蹴ったんですから。一緒に明学を倒しましょう!」
生徒達は大いに喜んだ。
この2人が入ればいいところまで行けるのではないか。
生徒達は2人に期待を寄せていた。
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