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車窓から竹林が目に飛び込んできた。
車内が暫く緑色の薄闇に染まった後、トンネルに入る。
私は腕時計に目をやった。家に着くのは夕方になりそうだ。
座席で伸び上がると急に眩しくなった。
窓の外は一面青田で、その真ん中辺りに細く引かれた車道をトラックが走っていくのが見える。
田畑が増えてくれば故郷は近い。
ペットボトルの茶を啜る。ずっと窓際に置いたままにしていたので、すっかりぬるくなってしまった。
この前、帰省したのがお盆だから一年近くも帰らなかったことになる。
窓際に頬杖を突いて考える。
今回は大学が始まるまで家にいようかな。
途中駅に停車し、駅名を確かめるべく目を凝らすと、窓ガラスに水滴が生じた。まだ梅雨は開けていないのだ。
再び視界が緑になり、雨に揺れる青竹の群が目を撫でる様に通り過ぎる。
目を凝らしても一節だけ光る竹などあり得ないのに、何故か目で追ってしまう。
竹には、そんな魔力があるのだ。
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