1滴目:血が足りない!

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  「ふあ~……おはよう、兄さん」 僕は眠い目をこすり、寒い廊下から暖かいダイニングへと足を踏み入れた。 「おはよう、満月(みつき)。また星を見てて夜更かしか? 目の下にクマができてるぞ」 僕の兄の新月(あらた)兄さんが、朝食のスクランブルエッグをかき混ぜながら僕に笑いかける。 「あぁ……うん……流星群よりも衝撃的なものを見ちゃって、あんまり眠れなかったんだ」 血を欲しがる女の子なんて……。 うぅっ、気持ち悪っ! 「ほー。流星群よりも衝撃的なものなんて、お前にとっちゃよっぽどのもんだったんだな」 「うん……なんか、ボンテージ姿の女の子が、血を求めてゾンビみたいに僕に迫ってきて」 僕はリビングのソファーに学校のカバンを置くと、食卓の自分の席に座った。 「ははっ、そんな吸血鬼みたいな話があるかっての。ほい、朝飯」 「ありがと……でも本当なんだよ、兄さん!」 「ばかめ、吸血鬼なんておとぎ話の中だけの存在だぞ」 「あぁ、宵音(よいね)の言うとおりだ」 「本当なのに……。まったく、宵音って誰だよ……」 ……。 …………。 ………………。 ガタンッ! 「ちょっと待って、いやいやいや、本当に誰ですか!?」 僕は、目の前に座って我が家の一員のごとく生レバーを貪り食っている女の子を見て、思わず声を上げてしまった。 キラキラと光るゴールドのミドルストレートの髪に、まるで……血のような真っ赤な瞳。 「宵音だ」 そのとても美しい女の子はなぜかドヤ顔で名乗る。 「に、……兄さん、この子だよ! 昨日僕の前に降ってきて、血を欲しがってたのは!」 「なに、人違いだ。アタシは優秀なヴァンパイアだ、そんな失敗はせんよ」 「ヴァンパイアって、吸血鬼だよね!?」 「違う。ヴァンパイアだ」 黒ボンテージの……宵音……さん、はレバーを食べながらキリリとした顔で答える。 いやいや、ヴァンパイアも吸血鬼も同じじゃないの!?
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