記憶さようなら

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駅から歩いて20分ほどのところにラウンドワンに着いた。 「結斗、あれ取って?」 紫音が指差したのは大きな猫のぬいぐるみがあるUFOキャッチャーだった。 「いいよ、あぁいうのは得意だから」 俺はうでまくりをし、ボタンを押す。 トスッ 鈍い音がした。 「すごーい! 一発じゃん」 ぬいぐるみを取り出しぎゅっと抱きしめる紫音の笑顔に胸がキュンとする。 「他に欲しいのは?」 「ないよ」 「じゃあ、なにする?」 「プリ撮ろ?」 俺は頷き、スタッフにオススメのプリ機を聞き、紫音と入る。 トントンと画面をタッチしながら背景を決めていく。 決まった紫音は後ろ向きで下がる。 プリ機のスピーカーから、やたらと高い声が俺らに話しかけてくる。 1枚目はお馴染みのピース。2枚目はピース。3枚目はダブルピース。4枚目は変顔。5枚目はハグ。 最後の6枚目はネタがなくなり俺は背景を決めながら考える。 "キスして"駅の入口で紫音に言われたことを思い出す。 「結斗?」 「あ、これでいっか」 「?」 「最後、キスしよっか…」 ドキドキと胸が騒いでるのを無視して、紫音の肩に手を置く。 「………」 「まだしないでおこう?」 紫音の人差し指が俺の唇に当たった瞬間、シャッターが切られる。 6枚中、6枚目が一番、カップルぽかったのはなぜだろう。
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