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中世ヨーロッパ風の建物の前で、一人の少年が立ち止まっていた。
「路地裏に、こんなお店なんて在ったっけ?」
紺色のブレザーを着こなしている彼は、きっと高校生なのだろう。
学校からの帰り道、美味しそうなコーヒーの匂いに釣られて、ふらふらと辿ってみたら、この場所に着いたといったところだろうか。
「まぁいっか、入ってみよう」
彼はそう呟き、ドアの取っ手に手を掛け、ゆっくりと手前に引いた。
カランカランとドアの上に取り付けられている古びた鐘が鳴り、それと同時に彼は店の中に一方踏み入れた。
中は落ち着いた内装で、少し緊張していた彼自信も余分な力がふっと抜けるのを感じ取っていた。
すると、奥の厨房らしきところから、一人の若い男性が出てきて、少年を見るなり「あっ」と声を出して、また厨房らしきところへ戻っていってしまった。
「えっ、ちょ…ちょっと……なんで?」
挨拶もなしに戻っていってしまった彼を引き留めるために伸ばした手は、力なく下に垂れた。
「なんだ?この店………」
そんな風に呆然と口を開けてカウンターの前で突っ立っていると、今度は、さっきの男と、ゴシックな膝下まであるドレスをまとった小さな女の子が出てきた。
「いらっしゃいませ、当店へようこそ」
女の子は、ふわりと笑いながら言うと、きれいなお辞儀を少年むけてした。
「えっ、あ……はい。どうも…」
さっきの男性共々お辞儀をしてきたので、なんなんだこの店はと思いつつ、少年もお辞儀した。
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