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「……いたよ。」堪忍した様にチアキはぼそっと呟いた。 「…で?何」 彼女の毒舌は恥ずかしいとより一層刺々しくなる。 「喋った?」サクはにやけながら問う。 「ちらっと見て、それ以上は見てられなくて、そのまま」 「喋らないの?」「喋りたいけど、喋りたくない」 チアキの声は震えている。 怒っているのか泣きそうなのか、サクにはよく解らなかったが、後者なら面白いと何となく思った。 「ねぇ、ちーちゃん」 「その呼び方嫌い」 「いーからちーちゃん、喋りたくないんじゃなくて、喋れないんでしょ」 そしてサクはチアキのほうへ身を乗り出すと、耳元に囁いた。 「喋りに行こうよ」 彼女はチアキの顔が耳まで赤く染まったのに気付いた。 そしてその赤い顔がうなだれたまま、こくりと頷いたことにも。
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