3207人が本棚に入れています
本棚に追加
/741ページ
女は小首を傾げて、うるっとした上目遣いで山南を見る。
山南もその愛らしさにドキッとしたが、なんとか想い人を頭に浮かべ、気持ちを鎮めた。
女の可愛らしい唇が、恐々と動き出す。
「……きっと…ドコにいっても、知らない人ばっかり…だから……」
フイに山崎をチラッと横目で見る。
その姿に、山崎は察して小さく微笑して頷く。
「……頑張るから…ココにいてもいぃ…ですか?…」
語尾は弱々しかったが、女は自分の正直な気持ちを伝えた。
「はい、頑張りましょう。私も微力ながら、お手伝いしますよ。」
山南がそう言うなり女は本当に嬉しそうに、花が咲いた様にニッコリした。
「ありがとうございます!」
自分達は茅の外で話が決まってしまい目を剥いていたが、その眩しい笑顔に近藤は、
「可愛いなぁーーっっ!!」
と顔を綻ばせ山南達に近付いた。
土方と言えば固まったまま。
局長及び副長三名で二対一。
もう勝ち目は無かった。
「しかし、自分の名すらわからぬのであろう?呼ぶに不便ときた…何としようか?」
近藤はそわそわとして、明らかに自分で名付けたさそうだ。
「局長に当面の名前、付けてもらい。な?」
山崎が女に言うと、女は近藤にぺこりと頭を下げ、
「お願いします。」
と小さな声で答えた。
最初のコメントを投稿しよう!