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「桝屋は『黒』だな。」
密書と呼ぶには小さな紙切れが一枚、土方の手の平で握り潰される。
「証拠が見つかったんですか?」
もはやクズと化した塊はキセルの先端に乗せられ、瞬く間に燃え尽きた。
「割木屋に大量の焼玉や刀剣、銃器は必要ねえだろ。」
ふうーっと吐かれた煙草の煙りが顔にかかり、沖田はむせながらそれを手で払った。
「ゲホッ、ゴホッ、ちょっと土方さん、こっちに吹かないで下さいよ。」
「あ、わり。」
「ったくもう‥‥腑抜けのオッサンですか、あなたは。」
「んだと?」
「何でもありませんよ。‥‥で?誰を行かせるんです?引っ捕らえるんですよね。抵抗されると面倒ですし、一番隊が出ましょうか?」
ギロリと睨まれても平然と話しを変え、そればかりかキセルを取り上げた。
「おめえが出張らんでも今、桝屋近辺にいる奴らに伝令出せば済むこった。‥‥おら、返せよ。」
「武田さん、ですか‥‥逃さなきゃいいですけど。嫌です、こんな体に悪そうなモン、さっさとやめたらどうです?」
「どっちも余計な世話だろーがよ。‥‥あ」
手を差し出して返すように促しても一向に返そうとする気配はなく、ついには障子を開けて丸ごと庭へ投げ捨てる始末だ。
「てめえ‥‥人のモンを何て事しやがる。つーか、火元になったらどうすんだ。拾いやがれ。」
「ヤですよ。私が煙草嫌いなの知ってるくせに、消さない土方さんが悪いんです。そんなに大事なら一人でコッソリと楽しんで下さい。」
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