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「睦実?」
「何?」
声をかけると
奴が嬉しそうに振り返った。
読書の最中だったのか―
奴は読みかけの新書を閉じて、
口元に笑みをたたえながら
俺をじっと見返してくる。
「抱き着いても良い?」
「えっ?い、いいよ…?別に…」
さらっとピンク色な発言をしてやると、顔を真っ赤にしながらも了承してくれる。
もう可愛くて仕方がない。
「いつでもお好きにどうぞ。僕は、読んでるから」
睦実は恥ずかしそうに
黙って本に戻る。
「気の無い振りしたって無駄だぜ」
ガバッと俺は睦実を
椅子ごと後ろから抱き抱えた。
「ひゃっ!わ、わ、」
「…本なんか見るな…俺を見ろ…」
「あうっ……!」
睦実は耳まで真っ赤にして息を荒げる。
奴の、男の割りに柔らかい胸に手を当てると「ドッドッドッ」と、心臓が天敵に鷲掴みされた
小動物のそれのように
うるさくわめくのが解る。
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