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「距離2百。ジョージ号が並走する敵一番艦に頭を抑えられそうです。」
見張りの報告が入る。ブリスタ帝国の旗艦ジョージ号は一級戦艦で、重武装な分、速度が遅い。
「向こうの旗艦は三級戦列艦ですから速度があります。並走だと、当然進路を遮ってきましたな。」
副官の言葉にもランバ船長は慌てる様子はない。
「予想通りだ。スプル提督ならわかっているはずだ。」
比較的小型艦中心で火力が少ないエギル王国船は、その分速度が速い。
隻数も5対3と多いので、先頭のジョージ号を遮るように隊列を組み、集中砲火を浴びせるつもりだった。
その時、スプル提督の乗るジョージ号から新たな信号がでた。
見張りが読み上げる。
「右回頭。3番艦を狙え。」
エギル王国の3番艦はイーストン号で、元々商船を改造したもので、船体の大きさの割には砲門が38門と少なかった。
その船体の大きさに目をつけられたのだ。
「距離100メード。逆走してます。」
「100なら射程内ですが。」
副官がライバに告げる。
「まだだ。ジョージ号の後だ。」
「敵艦、発砲!」
見張りが金切り声を上げる。
敵二番艦が大砲を発射したのだ。
ズーン、バシャッ!
至近弾で、ミズンマストが裂け、水飛沫が甲板を濡らす。
「距離70。ジョージ号が斉射!」
旗艦がついに砲門を開いたのだ。
皆が祈りながら敵艦イーストン号を見る。
その時、エギル王国のイーストン号でも怒号が飛び交っていた。
「敵一番艦発砲!」
数秒間の後、着弾と同時に左舷側の艦体に衝撃が加わった。
破片と共に轟音が響き、負傷者の叫び声があがる。
「被害を知らせろ。浸水は?早く玉を込めんか。こっちも撃て、撃て。」
イーストン号艦長の小柄なターシーはこめかみに青筋を立てて叫ぶ。
帆船は基本的に真横にしか砲撃できないため、射線上に標的がこないといけない。
逆走しているため、イーストン号からみて、ジョージ号は射線からずれつつあり、その後ろのランバが乗るノース号と射線が交差するはずだった。
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