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探検航海5日目。
見張りのズレンが大声をあげた。
すると直ぐに半鐘が打鳴らされる。
「船だ。三本マスト。大きい。見たことがないやつだ。3時方向、10キールは離れてる。」
甲板にいたエバートンも望遠鏡を目にあてた。
「進路は?旗みえるか?」
ズレンは船一番に目がいい。
上空を飛ぶノドシロカモメの性別もわかるという。
「進路はほぼ本船と直行、速度も速い。」
船に緊張が走る。このまま進めば、会合するということだ。
慣れない海の、しかも外洋であり、海賊船や軍船の可能性もある。
エバートンは無意識に腰のガンビー銃とセンジン刀を確認した。
「伝令だ、船長や士官を呼んできてくれ。」
ガスターが近くにいたパウダーモンキーと呼ばれる少年水兵に声をかける。
船で一番若く、確かセシルとかいう名前だった。
「わかりました。」
よく気がつき、すばしっこい、要領のいい子で、みんなに気に入られていた。
ただ、コッカー船長の名を聞くと、緊張したようでもあった。
セシル達伝令によって、上甲板にコッカー船長始め、士官が勢揃いした。
この時には、ズレンから、ブリスタ帝国の旗が見えたと報告があった。
ブリスタ帝国船は最近、エギル王国の商船を拿捕しだしていた。
つまり完全に敵性艦とわかったのだ。
「船長。恐らく3級以上の戦列艦でしょう。しかし、こちらは交易品を満載して足は鈍いです。」
丸メガネの真面目な主計士ジムは、神経質そうにブリスタ帝国船をみながら心配している。
レディハープ号はスプルー船と言って、中型で、その快速さが売りの船だ。
通常なら、戦列艦クラスの重武装の軍船に追い付かれることはない。
しかし、ジムが心配しているように、探検航海のために交易品や食料、水などを満載していて、重量が重かった。
さらに新造船で、まだ1月程度しか航海していないため習熟しておらず、普通はなかなか全速をだせるものではない。
「お前のいいところは慎重で確実なところだ。だが、臆病になってはいかん。自分の乗る船と、クルーに自信を持て。」
「どうだ、ガスターとルーシー。」
コッカー船長が航海士、掌帆長に意見を聞いた。
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