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溶けたモンスターを忌ま忌ましげに見ながら、オメガは続けた。
「何にせよ、俺達には関係ない話さ。俺たちゃ死ぬまで戦うんだからな。
ヘルパー司令官を守りながら、俺達を生かす神と、この雄大で有限な国を……」
オメガ達は、この国以外の国を知らない。
姿なき大いなる神の御力により、この国はエナジーを与えられている。そのエナジーの届かない異国へ行くことは、この国の民や兵士にとって自殺行為だ。
この世界に生まれた時から、オメガもアルファも兵士だった。
神とこの国を守るため、侵入者と戦うよう叩き込まれた。
オメガは手にした銃を見る。
国を守る特殊部隊であるNK隊に授けられた銃。
生まれながらに戦う者に与えられる銃。
司令官直属の部隊ではないにせよ、NK隊は猛者揃いで、司令官からかなりの信頼を得ているのだ。
神の加護の及ばない国の外でも生きることができ、かつ他国へ侵入・侵略出来るモンスターと違い、自分達が生きられる場所はこの国だけだ。
この国と、この国を国たらしめる姿なき大いなる神だけが、自分達を生かすのだ。
……神と国のためなら、この命だって惜しくない。神とこの国を蹂躙しようとするモンスターなど、一匹だって逃がすものか。
その時。
腰にぶら下げていた通信機から、アラームが鳴り響いた。
「こちらマース地方! 敵襲あり! かなりの数のため、劣勢! 応援求む!」
通信機から、悲痛な声が漏れ響き渡る。
「ちっ、奴ら、またしてもマース地方を攻めて来やがったか……!」
マース地方とノウズ地方は、中でも敵襲の多い地域だ。
最近の度重なる襲撃で、二地方の兵士は減っており、戦力は衰えていた。
明後日になれば、兵員を増力する予定だったのに、運が悪い。
何としてでも食い止めなければいけない。
国の内部奥への侵入を許し、司令官を殺されるようなことがあれば、神もこの国も、一貫の終わりだ。
神あってのこの国。
この国あっての神。
神と国あっての自分達なのだから。
二人の兵士は、マース地方に向けて駆け出した。
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